私ども北方空撮では、風速5m/s以上の風が吹いている場合はドローンを飛行させないという基準を定め、厳守しております。これは年に一度、国土交通省航空局へ包括申請を提出し許可・承認をいただくにあたって添付するマニュアルの中でも明文化されています。(当方は、飛行の際の安全対策など、ドローン操縦士として遵守すべき項目が記されたマニュアルとして「国土交通省航空局標準マニュアル②」を使用しておりますが、そのマニュアルの中でも、風速5m/s以上の場合に飛行させてはならない旨、規定されております。)

なぜこの基準を守る必要があるのでしょうか?一言で言えば、『ドローンは強風に弱い』からです。機体が小さければ小さいほど、また重量が軽ければ軽いほど、ドローンは風の影響を受けやすくなり、風下に流されやすくなります。普段は複数のGPS信号を受信しているおかげで安定したホバリングをすることができる優秀な機体でも、一定以上の風が吹くと姿勢の維持が困難になります。その結果、操縦不能に陥り機体を見失ってしまったり、最悪の場合墜落してしまったりする危険性が高まるのです。

でも本来、業務で使用されるレベルの中型~大型のドローンは、ある程度の耐風性能を持っています。例えば、世界最大手のドローンメーカー・DJIの空撮用機体(Phantom 4やInspire 2)のスペックを見てみると、「最大風圧抵抗 10m/s」との記載があります。これらの機体は、航空局標準マニュアルが定める基準を余裕でクリアできるだけの耐風性能を持っていることが分かりますね。ではなぜ、一見厳しくも見える「風速5m/s」という基準が定められているのでしょうか。

飛行“できない”のではなく、飛行“させない”

航空局標準マニュアルを使用する個人や法人は、通常飛行を禁止されているエリアでドローンを飛ばすための特別な許可や承認を得ようとしているか、もしくはすでに得ています。そのようにして「無人航空機の飛行に係る許可・承認書」を取得したドローン操縦士は、人口集中地区(DID)と呼ばれる市街地や、人または物件から30m未満の距離での飛行を行うことができます。

とはいえ、市街地には危険がいっぱいです。すぐ近くでは子供たちが遊んでいるかもしれませんし、ほんの少し離れた場所ではたくさんの車の往来があるかもしれません。電線や街路樹など、気づきにくい高い場所にある障害物に気を配る必要もあります。このような環境で起こす小さなミスは、いとも簡単に大きな事故につながってしまいかねません。だからこそ、ミスを誘発する恐れのあるリスクを前もって把握し、可能な限り排除しておかなければなりません。特別に許可・承認をいただき、本来飛ばしてはいけないエリアでドローンを飛ばしている者として、その行為が原因で他者に怪我をさせてしまったり、建物や車を損傷させてしまったりするという事態だけは何としてでも避けなければならないわけです。ですから、「(たとえ高い耐風性能を持つ機体であったとしても)風速5m/s以上の風が吹いている時には飛行させない」というやや厳しめに思える基準を守ることは、リスク管理上大変有効と言えます。あくまでも飛行“できない”のではありません。安全を最優先するために、飛行“させない”のです。

私ども北方空撮を含む全ての許可・承認取得者は、この意識を持って日々飛行を行っています。「何よりも安全第一」、これからもこのモットーを大切にしつつ、空撮業務に携わってまいります。