北方空撮の自己紹介ページには、次のような文が載せられています。 

「撮影時には安全を最優先するため補助者を同行し、インカムや双眼鏡を有効に活用しながら飛行いたします。」 

―北方空撮について

今回は、この『補助者』(アシスタントとも呼ばれる)の役割について特集してみたいと思います。 

補助者の存在は、安全を確保するために必要不可欠!!

上記の引用文にもあった通り、当方はドローンを飛行させる際、基本的には最低1名の補助者を同行することにしています。これは前回の安全コラムにも登場した「国土交通省航空局標準マニュアル②」の指針に基づくものです。マニュアルにはこうあります。 

3.安全を確保するために必要な体制 

3-1 無人航空機を飛行させる際の基本的な体制

・飛行させる際には、安全を確保するために必要な人数の補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる。 

・補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。

・補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。 

―国土交通省航空局標準マニュアル②

…ややイメージしにくいかもしれません。 具体的にどのような仕事があるのでしょうか?ではひとつずつ見ていきましょう。

まず北方空撮では、補助者に双眼鏡でドローンを常時監視していただいております。これは、操縦者自身で目視できるような比較的近い空域を飛行している場合においても同様です。このような体制により、飛行中のドローンがモーターやプロペラ、カメラ等の部品のトラブルを起こしていないか、鳥(主に猛きん類)が接近していないか、また、思わぬ方向に流されてそうになっていないかなどといった点において、より手厚く、より慎重に“リスク管理”を行うことが可能となっています。さらに、双方向同時通話対応のインカムを使用することにより、必要な助言を迅速に得られるような体制も構築しております。 

次に取り上げる補助者の仕事は、“ハンドリリース”と“ハンドキャッチ”です。これは、ドローンの離発着の方法のひとつで、地面からではなく頭上に高く掲げた人の手からドローンを直接飛び立たせ、また降りさせるというものです。当方はこの方法も、ドローンを安全に運用するのに有効な手段になり得ると考えております。と言いますのは、ドローンがプロペラの回転によって生じさせる風は思った以上に強く、環境によっては周囲の細かい砂や石、さらには草などを容易に巻き上げてしまうのです。万が一モーターに草が絡んでしまったり、小石によってプロペラに傷がついたりしてしまうと、飛行中の重大なトラブルにも繋がりかねません。そこで北方空撮では、お互いにしっかりとコミュニケーションを取りつつ、また、補助者本人や周囲の安全に最大限配慮しつつ、“ハンドリリース・ハンドキャッチ”を基本とした離発着を行っております。ただし、機体重量が10kg近くもあるような産業用の大型ドローンにおいてこの方法が使えないというのは、言うまでもありません。 

さて、次の仕事に移りましょう。それは“機材管理”です。とりわけドローンのバッテリーの管理〔充電と保温〕は重要な役目となっています。案件によっては、一日の撮影で複数のポイントを回ることも少なくありません。ですから、できるだけ飛行時間を確保すべく、移動の車内でもシガーソケットやポータブル電源・モバイルバッテリー等をフル活用して、使用した順に充電しておく必要があります。また冬場は、「バッテリーの保温が安全管理のキーポイント」といっても過言ではありません。バッテリーの温度が15℃を下回ると、たとえ飛行中でも突然バッテリーが落ちる(充電が切れる)場合があり、大変危険です。そのため、ホッカイロを活用したり自分の手で暖めたりして、バッテリーが適正な温度を保てるよう常に気を配っていなければならないのです。さらには、ノートパソコンやフィールドモニターのバッテリーを必要に応じて充電したり、microSDカード内に保存されたデータをパソコンに移してチェックしたりと、移動中も休む間もなく大忙しです。 

最後に取り上げる、当方における補助者の大切な役割は“第三者への対応”です。これは実際過去に何度もあったことなのですが、ドローンを飛行させていると必ずと言っていい程、数人の方が興味をもって近づいて来られます。(北海道ではまだまだドローンの存在が珍しいのです!)飛行前あるいは飛行後でしたら色々なご質問にお答えしたり、機体や機材をお見せしたりできるのですが、飛行中となると残念ながらなかなかそうはいきません。そこで、飛行中は補助者に第三者への対応をしていただくことになります。監視の手を緩めずに、なおかつ簡潔明瞭に状況を説明して安全な場所で少々お待ちいただく…このような状況下においては、やはり補助者の存在が不可欠だと感じます。もちろん、離発着時には第三者が付近に立ち入れないような対策を講じさせていただいております。 

以上、今回の安全コラムは『補助者』の役割についてでした!いかがでしたでしょうか?想像を超える仕事量の多さに、少し驚かれたかもしれません。もしいつかドローンの飛行現場をお見かけになられましたら、ぜひ、操縦者だけではなく補助者の仕事ぶりにも注目なさってみてくださいね!